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親友になれるかどうかを見分けるリトマス紙『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』

2001年のアメリカ同時多発テロ事件を背景に、この事件で父親を失った9歳の少年オスカーが父の遺品から見つけた鍵の秘密を探るためにニューヨーク中を探るという物語である。原作は2005年に発表されたジョナサン・サフラン・フォアによる小説。

まず「ものすごくうるさくて~」というタイトルは、主人公のオスカーが「アスペルガー症候群」の素因を持っているためで、執着やこだわりが強く、口で説明しないと気が済まないため。

また周りの空気や相手の気持ちをくみ取るということができにくい特性を持つため、これを言ったら相手が傷つくだろうなという気遣いができないので、社会性には問題があるけど、興味のある特定の分野については驚異的なまでの集中力と知識を持つため、知的水準は非常に高いと言われています。

要するに天才的資質を持つ嘘がつけない恐ろしいほどの正直者とも言えます。

この映画についてのレビューをいろいろ見ていると、主人公が持つこの性質を理解した上でこの映画を観るのと知らないで観るのとでは、映画の感じ方がまったく違うようで、作品の中でもう少しその部分を補足してくれればよかったのにと、そこだけは残念ですが、もしかしたらそこにフォーカスしすぎちゃうと、”特異な子の特異な物語”になってしまうと考えたのかも。

監督はこのアスペルガーの性質を子どもが本来持つ個性として描きたかったのかもしれませんね…ってことで冒険、ミステリー、ヒューマン、と盛りだくさんの要素が詰まった作品の私のおすすめポイントは2つ。

主人公のクリエイティブな感性は半端ない!

父親が残した謎の”鍵”と”ブラック”という名を手掛かりに、地図から探す範囲や調査にかかる時間を割り出したり、ニューヨーク中のブラックさんの住所や情報を書いた飛び出すカードを創って作業の効率化を図ったり、会った人の写真や特長、感じたことを調査日記にまとめたり、あと、この調査日記も飛び出す日記みたいに3Dになっていて、頭の中のイメージをそのままアウトプットした感じはなんともクリエイティブなんですよね。いや~すごいですよ、この日記欲しいですもん。

子どもに対して大人が自分の本当の役割を自覚できるかどうか、教育の未来もこれに尽きる

この作品のもう一つのおすすめポイントは彼を取り巻く大人たちの大人たる姿勢。オスカーの際立つ特性や言葉の多さや速さに圧倒されて見落としがちだけど、彼の特性をちゃんと理解した上で、程よい距離感を保つ方法をそれぞれが考え、実行しているんです。

例えばおばあちゃんは、主人公のオスカーと会話するのにトランシーバーやモールス信号で受け答えてあげたり、亡くなる前のお父さんは調査という課題をオスカーに与えることで、冒険気分を味あわせながら多くの人とコミュニケーションをする機会を作ったり、抽象的なことばが理解できないオスカーのためにおじいちゃんは言葉での会話ではなく、手のひらに書かれたYES、NOで受け答える方法をとったりと、いや~すごい。

周りの大人が面倒くさがることなく、ごまかしたりしたりせず、オスカーに合った方法でしっかりと向き合いながら父親の死を乗り越える手助けをしているんですよね。あああーもうハイレベルすぎるぅ。

どなたかが「この映画が嫌いという人とはたぶん友達になれない」というレビューを書いていたのですが、なるほど、その気持ちわかる気がします。

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